『ウィザーズハーモニー特別座談会~Wizard’s Harmoniyに見る成功と失敗~』
後編です。今回はゲームシステムの話が中心ですが
記者の方々に結構ダメ出しされてますね~。
こういうインタビューでこんなに言われるのは珍しい。そうでもない?
ただ記者のお二方が本当にウィズハのファンという感じなので、
それわかる!と同意できるところも多いです。
座談会参加メンバーは前回と同じく
・宮下氏(広報)
・吉田氏、大貫氏(プログラム)
・村瀬氏(キャラクターデザイン…ですが
今回はシステム中心のため喋っていません。なぜかカニ鍋を食べる写真が)
・千田氏、柏又氏(記者)です。
千田:システム面の話をしたいと思うんですが…。
宮下:そのへんは、みんな覚悟してきましたので、どんどん指摘してほしいと思います。
千田:プレイしていて一番気になったところは、キャラのパラメータの数値を見ながら、
スケジュールの決定ができなかったという点なんです。
宮下:そうですね。よく言われる点です。
個人的には、あのスケジュール画面は見やすいと思うのですが。
画面を切り替えて、赤い数字の課題を選んで行けばいいわけですから。
大貫:画面の切り替えに関しては、フェードイン、フェードアウトのスピードが遅すぎましたね。
柏又:切り替えるときに読みにいっちゃうんですよね。
PSは読み込んでいるときには、音でわかっちゃう。そのへんも損しているのではないかと思います。
画面を切り替える方式では、そういえばあの娘はどのパラメータをあげるんだっけ?と忘れてしまうときがあるんですよね。
大貫:そうですね。それに1日単位で決定することもなかったかと思います。
スケジュールに関して言えば、どのスケジュールを何日やるかということよりも、
どのキャラを同じスケジュールにするかという、キャラ同士の相性の方が重要になってくる。
だから、1日単位の入力でなくてもよかったのではないかと反省しています。
柏又:週単位でよかったと思います。
宮下:あと、スケジュールに関しても6人も決めなければならないというのは大変だったかもしれません。
大貫:発売後に制作サイドで行った反省会でも出たんですが、6人は多すぎたかなと。
集中力が続かなくなるというか、やはり、1人、2人は削ってもよかったかと…。
千田:6人というのはちょうどいい人数だったと思うんですよ。
キャラごとに相性が設定されているので、人数が多い方がそういうものが生きてくる。
ただし、各個人が自動でスケジュールを設定してきて、
それを修正する形であったなら、プレイヤーの負担は少なくてすんだのではないでしょうか。
それに、自動で設定するスケジュールがキャラごとに違えば、
もっと個性があらわれたのではないかと思いますね。
苦手な課題を克服するように努力するキャラもいれば、
ほうっておけば遊んでばっかりいるキャラがいたりしても、おもしろいと思いますね。
宮下:デバッグのときに面白い話がありましてね。1つだけ出てこないイベントがあったんですよ。
大貫:デバッグ担当者から本当にこのイベント入っているんですかって言われて。
プログラムのバグで出てこなかったんですよ。デイル先輩の実験イベントの方が優先して発生してしまう。
吉田:だって、1回しか起きないイベントを、2回も3回も起こそうって言うから…。
大貫:デイル先輩の実験イベントって、救済措置なんですよ。
一番パラメータの低いキャラに発生して、成功すれば能力値が上がるんですよ。
だけど、1年生キャラであるメリッサとかシンシアは能力値が低く設定されているんで、
どうしても2人にしか発生しない。それじゃマズイだろうってことで、季節ごとに1回は起こるようにしたいと…。
吉田:でも、誰も気づかなかった。
千田:それは直ったんですか?
大貫:ええ、「らいとにんぐらぷそでぃ」っていうタイトルのものなんですけどね。
宮下:マニュアルに書いてあるんですね。こういうイベントが起こりますっていう例で…。
デバッグの方から起きないんですけど、どうなってるんですかって言われまして。
大貫:ないよぉって、大騒ぎ。で、プログラム的には吉田の担当だったんですが、
確認してもらった彼から起きないよって言われました。
吉田:パッと見たら日付が同じなんですよ。それじゃあ、起きないって。
千田:デイル先輩、強しってとこですね。
千田:キャラの話に戻るんですけど、
「ときメモ」だと誕生日のプレゼントが3択なんだけども、それが自然とわかる。
それだけキャラの好みとかがプレイしているだけでわかる。
だけど「ウィザーズ」だとちょっと選択時に困ってしまうことがある。
これは誕生日に限らず、イベント全体に関しては選択時に迷ってしまうことが多かったですね。
あと、間違えたあとのフォローもなく、繰り返してプレイするしか解決策がない。
大貫:選択肢選びに関して、事前にヒントとなるようなものがあればということですね。
うーん、そうでしたね。あれに関しては難しすぎたかなと思っています。
千田:あと、キャラを勧誘するときなんですが、あの方法も意見がわかれているんですよね。
出現場所と時間が決まっている。あれだと好きなキャラだけ選べるからいいという人と、
偶然性が少ないからイヤという人がいますね。
大貫:せっかく、たくさんのキャラがいて、
毎回違うメンバーでプレイすることが可能なのだから、あのようにしたんです。
ランダムじゃないものと、ランダムなものの中間をイメージして設定したんですが…。
もうちょっとランダム的な要素を入れられたらなと思います。
あれはキャラの自己紹介をする部分なので、その点では成功したなと思っています。
柏又:自分でプレイしているときには、何も考えず、サクサクとプレイしてましたね。
宮下:雰囲気がすごくいいんですよね。数値を気にせずに、キャラとの会話が楽しめる。
柏又:もう少しキャラとの会話がほしかったというのはありますね。
休日に街に行っても、誰もいないことが多くて寂しい。行ったら誰かしらと会えるようにしてほしかった。
宮下:いるようにしてもよかったんですが、そのへん、ちゃんとした理由があるんです。
大貫:最初はもっと少なかったです。特定の日に特定の場所にしかいなかった…。
吉田:それって、絶対わからん。絶対会えないもん。
大貫:そのあと期間が1カ月になって、最終的には季節になったんです。
でも反省点として、どこに誰がいるかわかるようにすればよかった。
街に全体マップにデフォルメキャラを置いたりして。
柏又:休日にキャラに会っておかないと、
そのキャラとつきあうエンディングが見られないだけに、そこはなんとかしてほしかった。
初めてプレイする人は、キャラとつきあうエンディングにたどり着くのは難しいと思います。
大貫:男性キャラがいるっていうことからもわかると思うんですが、
恋愛をそんなに重要視していないんです。仲間と楽しくすごしていく。
仲間と一緒にいるだけで楽しいときってあるじゃないですか。
特に制作スタッフも若いんで、そういう感じをよくわかっているんです。
恋愛よりも大事にしたいものが、きっとあると思うんですよ。
千田:そのへんに共感してくれたプレイヤーは支持してくれたと。
育成シミュレーション=恋愛という意識の強い人には不満が残ったのではないのかな。
でも、プレイヤーの関心は恋愛の方にいってしまう。
大貫:そのへんはライトに作りました。
一緒にいたいという気持ちを大事にしたつもりです。
私たちはテーブルトークRPGが好きなんですよ。
ひとつの目標に対して進むというわけでなく、普通に生活している中で、
たまたま事件に出遭っちゃって、それを楽しくのりこえる。
それをイメージしてイベントを設定したんです。
後編は以上です。のちの2に生かされたところも(ちょっと)あり、
エタメロ悠久に繋がるところもあり…で興味深い内容だったと思います。
最後の大貫氏の言葉、
『男性キャラがいるっていうことからもわかると思うんですが、
恋愛をそんなに重要視していないんです。仲間と楽しくすごしていく。
仲間と一緒にいるだけで楽しいときってあるじゃないですか。』
『普通に生活している中で、
たまたま事件に出遭っちゃって、それを楽しくのりこえる。
それをイメージしてイベントを設定したんです。』
やはりここがウィズハ~悠久系の真髄ですね。
仲間とワイワイ過ごす日常生活をメインにしたことで
独自の魅力が出たゲームだと思います!
それでは最後に記者の方々の後記があるのでお読みください…。
(柏又)私は「ウィザーズハーモニー」を、クラブのメンバーを集めて
仲良く1年間を過ごす”友情育成RPG”として遊んでいます。
女の子に囲まれて過ごすもよし、男同士で精進するもよしと、
いろいろなシチュエーションで楽しめるところが気に入っていたのですが、
プレイ回数を重ねるうちに、もっとアカデミー活動にスポットを当ててもよかったのではと感じました。
部員を勧誘するときにルーファスが
「クエスト解きサークルだから…」と説明するところがあります。
ときどきアカデミーに持ち込まれる依頼がこれにあたると思うのですが、
これらのイベントも、どちらかというと選択肢が重要で、
日頃の成果が発揮できるところが少ないと思います。
しかし、足りないと思っていた点は、ほとんどがあとから追加された箇所だとか。
となれば、やはりイベントなどの不満点を充実させた
「2」の発売を、ぜひともお願いしたいところ。
今度は自分の名前を入力してプレイしてみたいですね。
(千田)育成シミュレーションというジャンルは、PSでは
「ときめきメモリアル」によって、多くのユーザーがその魅力を知りました。
その追い風に乗るようにこの「ウィザーズハーモニー 」が発売されました。
このソフトは、このジャンルは何も恋愛だけではないのだということを示してくれたと思います。
座談会では声優についての話題も出ました。
はじめは喋る予定はなかったそうで、ユーザーのサービスとして声を入れたので、
逆に声優を使わなかったことに対してここまで反応があるとは思わなかったそうです。(下線:自分)
有名声優を起用することが、そのゲームの価値を決めるものではありませんが、
それだけユーザーも音声面に関心を持っているわけです。
しかし、それに媚びることなく、
新しいテーマを持った育成シミュレーションが登場してほしい。
その期待に応えてくれる作品が続々登場するという手応えを感じています。
個人的に後編で一番衝撃だったのはこれ(下線)で、
まさかサービスで入れたものが、真っ先に欠点として挙げられる事になるとはね…。
でもボイス無いなら無いで不満が出ただろうし、
あの声でも入れたのは良かったと思います。はい。
この後記読むとなんだか色々なものに思いを馳せてしまうなあ。
最後の最後に、この座談会で強調されていたのが、
制作スタッフが若いという点です。
作り手が若いということは、それだけユーザー側と感性が近いわけで、
前編での「思っていたより高校生に受けた」というのも
それだけ「こういうのがやりたかった!」という
若いユーザーの(潜在的な)需要に沿っていた、
時代に合致していたからだと私は考えています。
それにやっぱり、
完成度が低くてもトガったところがあるゲームって魅力的ですからね!
ウィズハ、特に1はかなりシナリオも奔放でしたから(2も大概ですが)
今のインディーズゲームに近いものがあるかもしれない。
座談会編はこれで終わり!私はまた駿河屋の旅を続けます。
それにしても昔のゲーム雑誌を読むと未来人感覚になれて非常に楽しい。
FFⅦもまだ発売前ですし、これが四半世紀後にPS4でもう一度出るとは、
ときめきメモリアルの女性向けバージョンが出てしかも4作目まで出るとは!
マジで未来は何が起こるかわからないですね。
そもそもウィザーズシンフォニーがまさかの出来事でしたから。
また25年後にウィズハの新作が出るかもしれないですよ…。